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[174996] ある小児科の先生の話

詩人:中村真生子

街の商店街の中ほどの
ビルの2階に小さな小児科が一つ。
開業して37年。
先生のところには
だんだん患者がいなくなる。
なぜなら
ここに来た子たちは
みんな元気になっていくから…。
先生は注射もしなければ
薬も出さないけど
子どもの健康にとって悪いことは
ちょっとばかし手厳しい。
だから親は耳が痛い。
けれどそんな噂を聞いて
また新しい親子がやってくる。
今、81歳の先生。
開業以来休んだのは
数年の前にたった1日。
奥様の葬儀の日だけだった。
街の商店街の中ほどの
ビルの2階に
医療機器ではなく本に囲まれた
寒いけれど温かい小児科医が一つ。
先生に出会えた子どもは幸せだ。

2012/03/16 (Fri)
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