詩人:獏
:不意に夢に再生される記憶:
夜明け前 布団をはねのけ 時計を確かめた
A,M,3:15
深夜に見た夢がまだ
掻き毟りたくなる かさぶたみたいに
僕の 内側 に こびり付いている
初秋の夜の 生ぬるい熱気は
鬱陶しいくらい 根気よく
ピッタリと肌に寄り添ってくる 獣 みたいに
僕の全身の体毛を
総毛立たせた
その気配を振り払って
洗い流せたとしても
まるで 知らないうちに
身体から剥がれていく
垢やフケのように
ハラハラと ジワジワと
滞る事無く
僕の 内側 に
湧きだして溜まっていく
繰り返し 再生される
記憶 は
受け入れるしか しょうがない
現実だったのだし
今も続く 事実でもあるのだから
夢は 過去の事実よりも
残酷だった
しかし
夢から受け取ったものは
昔怯えていた 恐怖 では無くて
行き場の無い ジレンマと
虚しさだった
空々しい程 片付けられた部屋で
起きだした鳥達の 声を聞いている
夜には荒れていた海が
今は もう
穏やかに のっぺりと
光っている
僕の 不快指数は まだ
下がらない
凪いだ海面を ボンヤリ見つめながら
泡立ち続ける 内側 の
ざわめきを 一すくい
両手ですくっては
冷まし続けてみる
消せない思い出を
取り出しては繰り返す
夢と現実を
照らし合わせながら
一すくいずつ
冷まして
内側の水面が 凪いだ海のように
静かにたゆたうまで
繰り返す
今日の日差しに 包まれる頃
夢も現実も
あるがまま内側に住まわせたら
今日の事を 始めよう
夢も現実も
それぞれから伝わる気配も
抱えたままで
今日の事を 始めよう