詩人:理恵
ぼくの心は、魔術師だ。
深い芯の底まで覆い尽くして
魔法をかける。
どろっとしたおどろおどろしいものが
黒い夜を見るたび渦巻いている。
生き物みたいなそれは
どんどんぼくを喰い荒らし
優しさに触れるたび
弱くなり
したたかさに触れるたび
脆くなり
卵の殻のような、儚いもので
守られた大事なものは
いとも簡単に呑み込まれてく。
ああ、止まらない。
わかっていたって止まらない。
もう、彼に逆らうことは
できない。
そうしてまたひとつ、もうひとつ、
なくしてく。
これ以上深い闇はないと
だから大丈夫だという確信は
あっさりと破れて
どんどん新たな深い闇を知っていく。
囚われた檻から逃げても
結局彼の屋敷の敷地内。
ぼくが、ぼくで、あるかぎり。
ぼくの心に住む魔術師は
ぼくだから。
H26.11.30