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詩人:高級スプーンあと何年
ものはものでも
他人のものなら
可哀相とも思わないのに
無機物ですら愛おしい
愛するものが
失われる瞬間を
看取ったなら
こらえきれずに嗚咽するはず
どんなものでも悲しいと
もの思いに沈めるあなただった
ただひとつのものを除いて
たったひとつを追い求め
何度もリセマラするように
執拗に愛を選んでは
一方的に別れを告げる
身勝手に捨てられて
それでも思い煩ってしまうのは
わたしの勝手でしょ
つべこべ言わなくなった
こうべは小さな壺の中
田舎に墓があると聞いた
参列すらしなかったので
事情はよく知らないけれど
一粒も涙は出なかった
「見て下さい
まるで
合掌しているみたいでしょう?」
きっとそれは後付けで
見ようによっては
そう見えるだけで
真実では無いんだろうけど
そうなんだろうけれど
それでも尊いと感じるのは
大切なものだから
かろうじて生きている
振り払えずにここにいる
それでいい
それでもいい
誰のものでも
誰のものでなくても
わたしはわたしなんだもの
続きはないけど
続いていくんだ
いつか終わりが来るまでは
たとえあなたと訣別しても