詩人:さみだれ
"殺してください"
彼女は懇願した
私の前に跪き
顔を隠しながら
私は死を選ぶ神ではない
まして人殺しができる人間でもない
"殺してください"
なおも彼女は懇願する
何がそこまで辛いのか
生きる希望はないのか
そう問いかけようも
彼女の耳は隠れて
その背は丸くなって
もし私が悪魔だったなら
彼女の願いを聞き入れてやれただろう
"殺してください"
彼女の声はいよいよか細く
やがて嗚咽しながら肩を震わす
私はただ立ち尽くすのみで
彼女の恥を捨てた姿を
見つめるしかできなくて──
2012/06/20 (Wed)