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詩人:香奈
『もう死にたい』
そう呟いた
すでに絶望にいる私は
涙なんか流さない
『悩み疲れた。逃げ出したい』
また呟いた
逃げ場なんてない事を知っている私は
うなされて眠れない
そんな私に
『君』は優しく囁く
『何かしたい事はない?』
え?
『なんでもいいんだよ。ちょっとした事でもいい。やりたい事…ない?』
…
……
カラオケ行きたい
『うん』
痩せて…お洒落したい
『うん』
スカートとか随分穿いてないから…可愛いの穿きたいな
『うん』
可愛い洋服着て…
出かけたり…
友達に会いたい
『うん……他には?』
…恋人…欲しい
『うん』
恋人…結婚…したいっ
『うん』
結婚して…子供産んで
……し…
幸せになりたいっ…!!
気づいたら涙が
流れていた
声を殺すように
泣いていた
『君』は優しく
私の枯れた心を
少し潤した
優しく…抱きしめ
頬にキスをした
枯れたはずの涙は
枕を濡らす
眠れなかった私は
夢へ落ちた
夢で『君』に会えるかな
『君』は不思議
だって
『君』は私を抱きしめられない
『君』の体温を知らない
『君』の匂いを知らない
だって
『君』は
二度と笑わない
『彼』