詩人:高級スプーン似
勝手に価値を付けられて
身勝手に
その価値を奪われた
紙切れになった紙の裏
少年はぽつりと
神様描いた
高くなってもいい
とにかく早く届けて
足りない分は
この命で支払う、と
四方八方
遠方から彼方へと
速達で出された願い
その数 実に八百万
神様 実に迷惑千万
「神様、助けて」
そう言われても
「神様、救って」
困るんだけど
「神様、お願い」
されてもなァ
戦争なんて止められない
不治の病なんて治せない
災厄なんて祓えない
最悪だなんて
言われたくない
第一、俺の事
そんなによく
知らないだろう?
大切な人にも頼めぬ願い
他人の俺に
「叶えて」だなんて
どうゆう神経してんだよ
万能なのは想像上だけ
現実に遠く及ばない
勝手に価値を付けられて
身勝手に
その価値を奪われた
紙切れに描いた神様に
少年はぽつりと
想いを込めた
いくら待っても
返事は来ない
何通送っても
願いは叶わない
いつまで経っても
状況は変わらない
むしろ悪くなる一方で
非難苦情に罵詈雑言
紛れて叫ぶ悲痛に苦痛
宛名はすべて“神”様で
「助けてくれなかった」
そう言われても
「救ってくれなかった」
困るんだけど
「あれほど願ったのに
叶えてくれないなんて」知るかよ
許可も取らずに
描いた神様
見つかって
くしゃくしゃにされ
少年は、
「神は死んだ」
おいおい
勝手に殺すなよ
「神は俺だ」
おいおい
勝手に名乗るなよ
想像したのはお前等だ
無能か万能か
決めつけたのはお前等だ
都合の良いように
設定を考えて
解決できない問題を
全部、俺に押し付ける
挙げ句の果てにこれか
“神様”を
創造したのはお前等だ
夢を見るのは自由だが
俺を見捨てるのも自由だが
勝手に価値を付けられて
身勝手に
その価値を奪われた
紙クズになった神様に
少年はぽつりと
涙を落とした
少年はぷつりと
命を落とした
「神も死んだ」
おいおい
勝手に殺すなよ
少年がくれた想いだ
そう簡単にやるもんか
紙クズになった神様は
心にそう誓ったんだってさ