詩人:どるとる
夏草 揺れる
まぶしい陽射しの
中に見ていた
逃げ水は幻
きっと何もかも
過ぎ去れば幻だよ
誰かが言うのを僕は聞こえないふりした
回り続ける夏の日々
ただアスファルトに照り返す光
万華鏡映し出したような あの夏に置いてきた忘れ物ひとつ
この胸に空蝉のように残ってる
風鈴 揺れる
窓の外上がる花火
闇の中に咲いた
大輪の花
きっと美しいもの程 記憶からひとつずつ消えて行ってしまう
そんなこと信じない
何かを追いかけていたような 何かに追いかけられていたような
そんな毎日の中に 刻まれた日焼けの痕が残した痛みに似た
二度とは消えないさよならが残ってる
蝉しぐれの雨が鼓膜を濡らす
やがていつの間にか知らず知らず
遠ざかるその音色に
耳をすますことを忘れて僕ら
また何か大切なものをなくした
回り続ける夏の日々
ただアスファルトに照り返す光
万華鏡映し出したような あの夏に置いてきた忘れ物ひとつ
この胸に空蝉のように残ってる。