詩人:高級スプーン似
遊び相手がほしかった
恋愛ごっこがしたかった
単純明快な理由が
複雑怪奇なきみを造り出す
昔話と違って容姿端麗
美しい見た目のきみは
中身も素晴らしく
すべてにおいて万能で
世の理想を体現した
完璧な人間だった
ただひとつの欠点は
あなたが人間であること
そこに佇むだけで
絵になるきみの
隣でいることが
堪えがたい苦痛になるまで
そう大して月日はかからず
儚く輝く三日月のような微笑
見る度に
日に日に老いる自らを
疎ましくなり掻き毟る感情
「お前の面など見たくない」
心配するそれを
冷たく突き放すけれど
何よりも輝きを放つ存在の前では
満ちることなく欠けていく
何もかも忘れて朽ちていき
動かなくなったあなたを抱えて
それでもなお
儚く微笑んで
幾星霜の月日が経っても
鮮やかに美しい
その姿は
額縁に飾れば
永遠延々と見飽きることはないだろう
遊び相手がほしかった
恋愛ごっこがしたかった
望みは叶ったわけだが
あなたが居なくなった世界で
愛を知らずに
愛を貫くひとの姿まで
知る由もなく
また語られることもなく
続いていく
いつまでも
いつまでも