詩人:トケルネコ
朝から山さ入って探すのは
山菜とか茸とか山の神さんの施しモン
わたしら所詮下っぱの端くれで
産まれたときからこんなんで
二十歳過ぎてもなんにも変わらず
今日も真冬の風に吹かれながら
暗いうちから家をでて、暗くなるまで手足動かし
春はまだかと歌ってたのも少女のうちで
今じゃみんなと一緒に 眉間に皺寄せ無駄口叩かず
ただ一歩、次の一歩と土を踏む
都会じゃ雪も綺麗じゃなんじゃと好かれるらしいが
わたしら好きにはなりゃあせん
ここでは全てを閉ざす無慈悲な魔蟲と呼ばれとう
道もなくなりゃ姿もみえん 掘ったそばからまた埋まる
わたしら何が悲しゅうてこんな世界に産まれてきたのか
かじかんだ手はいつもいうこときかんと震えとる
今日も真冬の風に吹かれながら
みんな独りぼっちで鉈を振るう 眉間に皺寄せ無駄口叩かず
ただ一歩、次の一歩と鉈を振るう
枕辺に立つ者も震えとるこの村じゃ 黒も白にと頬被り
今日は赤子の甘い指 握っては撫で
明日は赤子の青い腹 擦っては舐め
餓鬼も婆も魔蟲の炉端で笑っとる
喰うや喰わずのアバラ雲見上げ、ただ泣いとぅ
どこにも行くあてなんぞないから 誰も断ち切れんものばかりじゃから
みな目ェ食い縛って、血ィ振り絞っては
この小さな世界に鉈を振るう