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[184960] シネマ

詩人:どるとる


ふいに回り出す誰かの物語
それはまるで何かの映画のように

当たり障りのない暮らしを映して
特にタイトルは決められてない

時折 画面が滲むのは 雨に似た涙が降ったから

うれしいような 悲しいようなこの世界は
誰の目論見で 今日も続いているんだろう

時折この穏やかさが恐く思うのは
当たり前がいつか当たり前じゃなくなる
そんな気がするから

証明の落とされた部屋 いくつもの席が並ぶ
その一つ一つの席は一人にひとつずつ用意されているんだ

自分という映画を自分が観るような

泣いたり 笑ったり
全く出来損ないのシネマ
でも誰も自分の人生にヤジを飛ばしたりはしない
ただ、誰も食い入るように画面を見つめて 時に涙を浮かべたり ほくそ笑んだりするだけ

そしてやがて、気づけば席を外す人が見受けられて
二度とここには戻ることはなかった
僕もいつかこの映画の終わりが来たら
席を外すのだろうか

なんてことを思いながら今日も自分という映画を見てる

僕は登場人物でもあり 映画を回す監督でもあり
時に脇役にもなる
だけど、自分の人生の中では誰もが主役なんだよ

ほら、いくつもの夜が 朝が
繰り返されては映画は絶え間なく
僕らの日々を映し出す

そして誰かの
物語がひとつ終われば
べつの誰かの
物語がどこかで始まる

そして回り出す誰かの物語。

2014/05/12 (Mon)
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