詩人:さみだれ
君はたまご焼きを作る
それしかレシピを知らないから
買い物に行けば君は真っ先に卵の棚に向かう
スキップなんて恥ずかしいからやめてほしい
君と僕は週に一度ケンカする
マヨネーズか醤油か
その度君はふて腐れて
セックスもせずに寝てしまう
それでも次の日には何事もなかったようにたまご焼きを作り
夜には僕を求めた
君はおばさんになってもたまご焼きしか作らない
不思議なことに僕は飽きない
それどころか日に日に腕をあげる君のたまご焼きが楽しみでしょうがない
どうやら子供も同じようだ
ご飯の時にはちゃんと向かい合って同じ皿のたまご焼きをつつく
君はおばあちゃんになってもたまご焼きしか作らない
年金だけの生活で裕福とは言えない老後だけど
君は文句ひとつ言わずたまご焼きを作った
たまに遊びに来る孫たちにふるまっては
ニコニコと嬉しそうに笑う
僕は君の笑顔だけでお腹が一杯だ
君はいつまでもたまご焼きを作る
毎日同じように
いつもたまご焼きを作った