詩人:さみだれ
"きっと
幸せなんてものは
私たちが不意に心をからっぽにしたから
生まれた結晶にすぎないんだ"
美しいエメラルドグリーンの髪を指に巻きながら
彼はさみしそうに言った
違うわ
私はそう言いかけてやめた
かわりに彼の膝をさすった
ふと窓の外に目を向けると
遠くに控えめな月が見えた
それは彼によく似ていた
夜の闇にさえとけこめないひどく惨めなものだった
彼が喋らなくなったから私は窓から目を背けた
彼は眠っていた
首のすわっていない赤ん坊のように
私は彼の頭を肩においた
"きっと
幸せなんてものは
私たちが不意に心をからっぽにしたから
生まれた結晶にすぎないんだ"
私の心は幸せなのかしら
彼はもう答えなかった