|
詩人:高級スプーン似
人の心を読んだあと
人の目を気にしながら
あなたの左胸にそっと戻した
気付かれなかっただろうか
知らない方がいいことがあるなら
死んだ方がいいこともあるのか
地球に爆弾を仕掛けて
確かめてみたい
必死と書いて
メメント・モリと読ませる
あなたが本当のところ
どれだけ本気で生きたいのかを
試すような真似ばかりしてごめん
って
鏡に向かってお辞儀して
ネクタイを締め直して玄関へ
今日も一日を始めるわたし
眠る前のわたしはどこへ
恥の多い生涯をかなぐり捨てるには
無駄に塗りたくった化粧
何層にも厚く重ねて無恥を晒す
この顔のせいで
時間が足りない
足りやしない
鏡の前で土下座しては
この世で一番の悲劇を劇的にぱしゃり
囲われた世界に投下する
不安や逆恨みからくる
燃料はまだまだあるよ
だから
背中を向けないで
わたしはここにいるんだよ
とっつきやすい
この心
つっついてみてよ
もっと
もっと
ほら
知りたかったから
手を伸ばした
見るんじゃなかった
って
悔やんでも
もう遅いんだよ
最初から気付いていたんでしょ
それなのに
それなのにさあ
他人事で済ませて
あったところに戻さないでよ
元居た場所には戻れないから
別のだれかに興味を示したあなたの心に落ちた羽毛は
精一杯の羽ばたきを示す(わたしという希薄な存在証明の)
唯一の証拠
その筈だけど
確かめるすべはなく
踵を返して家路に着いた