詩人:リコ
雨など染みない
そんな身体が
欲しい訳じゃ無い
切り裂かれる事などない
そんな心が
欲しい訳じゃ無い
あの木は
たやすく
冬を受け入れる
あっけなく
緑葉に去られる
その情けない身体
余す事無く
一人の人間に見せつけた
恐怖に似た
エネルギー
震え出す僕
蟻より小さな身体になって
削れたピック達共に
歌っては泣いてを
日々として
未来として
重ねていったあの頃
使い古しの切れた弦
マーシャルから
垂れ下がる
シールド
いっそ
首に巻き付けてしまえば
そんな
ちゃちな夜を
安い紫絵の具で
塗り替えて
殻へ殻へ
無音の眠りの世界へと
自分をさらっていったんだ
恐らく舐めたら
酸っぱいのだろう
僕の脳味噌
偏る思考に
お手上げだった
裸になったあの木に
名前をつける勇気も無い
ああ
もう枯れてしまったのだ
そう呟くしか
出来ずにいたんだ
けど
君と言う奴は
あの木にうっとりとした
視線を注ぎ
涙を浮かべながら
こう言った
「なんて立派な木なんだろう」
その時
君の一言で
目の前の枯れ木に
若々しい緑葉が
突然生い茂ったんだ
けど二度の瞬きで
木は元の枯れた姿に
戻っていた
そしてもう一つ
君の一言で
僕は蟻では無く
君と同じくらいの
背丈に
人間に
戻っていた
「やってごらんよ」
かかとを上げて
少し背伸びした僕に
木と君が
語りかけてきて