詩人:是清。
気紛れにやつて来た
目の前が眩む強い炎天下
髪洗ふ/艶やかな野茨
柔らかな紫陽花
妾慰めない
花冷えの頃に聞いた
噂では心許無くて
丸で足を上げる理由にならない
「何処にゐるの」
現在は未だ皐月闇
明ける事の無い青嵐
「傍にゐて」
まう二度と云はない
諦め掛けてゐた
慌て気味の涙は
夕暮色に染まる白雨
肩を抱く/陽炎のやうな腕は
温かく/不確かで怖い
「何処にゐるの」
染みは現在広がり雲の峰
腐る事の無い早苗月
「愛してゐる」
まう云はない
「此処にゐるの」
君は現在水馬
溶ける事の無い/隔たり
「愛してゐる」
まう聞けない。