詩人:風凛
『うむ、来ると思っていたよ。』
「関係を…あいつを返して下さい。お金はここです。」
『ふむ、頑張ったね。覚悟は本物だった。約束通り、記憶を戻してあげよう、…と、言いたいところだけれど、どうやら返す必要も無いみたいだねえ。』
「なんですって……それは一体どういう…」
ガチャッ。
[店長、よかった。やっと見つけました。]
バイトの(元)彼女がびしょぬれで、いきなり質屋に入ってきたのです。若者はとても驚きました。
[探しましたよ。傘も持たずにどこかへ行っちゃうんだもん。はい、店長の傘。]
「あ、ありがとう。」
[店長、なんか私、いろいろ忘れてたみたいで、ごめんなさい。私、店長のことが気になってて、…それで店長の事を考えていたら、全部自分で思い出したの。…だから、許して、ごめんなさい…。]
彼は黙って彼女を抱き締めました。おばあちゃんは微笑んで、一言、何かを唱えました。
二人は気がつくと、明るい日差しの中にいました。そこは雨が上がった公園。質屋の姿はどこにもありませんでした。
―end.