詩人:巳年生まれ
もしかしたらきみは
こんなかなしいところに
居たくはなかったのかい
もしかしたらきみは
こんなさびしいこころを
見たくはなかったのかい
もしかしたらきみは
こんなわびしいところに
来たくはなかったのかい
もしかしたらきみは
こんなやましいこころを
見たくはなかったのかい
此処に餃子がひとつある
きみのぶんの餃子だよ
はやく帰ってこなけりゃ
ぼくの餃子になるんだよ
はやく帰ってこなけりゃ
ぼくは餃子を食べるだろう
はやく帰ってこなけりゃ……
きみのためだけに
とっておいた餃子
焦げ目が少しついた
きみのためだけの餃子
餃子は今も
鉄の上で泣いている
きみは今
何の上で笑っているの?
ぼくのためだけに
出て行ってしまったきみ
なみだが少し出た
ぼくのためだけのきみ
ぼくは今も
鉄の上で泣いている
きみはどこで
何の上で笑っているの?
きみが居ないその日から
しばし皮に閉じこもった
きみのためだけの餃子が
耐えきれずに腐り始めた
嗚呼 王手だ