詩人:高級スプーン
行き場を失い
表記に困り
苛み黒く瞳は翳る
蛍光ペンにも目が眩む
明るい景色は見たくない
モノクロの虹
丑三つの二時
背を向けた陰影を
見落とさず事細かに
振り向かせずに
君は訊く
乾く前に触れないで
注意は聞かずに
自然に不自然に
動いた手が後ろから
僕の口を塞ぐ
べっとりと付着する
洗っても落ちないから
有名な果実の赤すら
ぼやけて判別不能に
振り返る人ひとり
崩れ泣く人ひとり
だから言ったのに
依然として漠然として
山場を迎えても
盛り上がらない
他人ならよく眠れる
快適なストーリー
心の中
壊れて虚ろ
穏やかな
余生を過ごそうと
流されながら
ウトウトと僕も
泣き顔が煩いな
外は晴れ
止まない雨
閉じた口
開いた目
肝心な部分塞がれて
溜め息も吐けず
洩らしたのは
涙
比類無き哀らしさ
貰い泣き思わず
抱きしめた
巻き込んだ弱さとか
差し伸べた弱さとか
相俟って滲んで
余計に前が見えない
対になって遂に
妄(ツク)り上げてきた
闇も身も焼き尽くされ
灰と化し
いとをかし
窪んだ赤い目は
見つめてくる
色彩も感情も豊かに
見つめてくる
息吐く暇もなく
観せられる走馬灯
値の張らない丘で
根を張るには
独りじゃ心細くて
平気なフリをして
笑っていたりして
唇噛んだ顔
マジックで塗り潰し
変わり者演じてた
塵になった孤独
集めて山にして
潤ませた目から
注がれた涙で
産まれた芽を
投げ出さないで
育てみたくて
君を強く抱きしめる
あまり感じないのは
温度差がないから
演技じゃなかった
変わり者の二人には
丁度良いぬくもり
下らなかったら
一緒に眠れば
怖くなったら
起こしてくれたら
孤独を感じても
静かに側に居るから
真っすぐに真っすぐに
見つめ合ってそれから
赤い熱い大地にだって
小さな花を咲かせよう
並んだら少しは強く
瞬間瞬間に抱きしめて
時々ひとり揺れていて
薄暗がりで
霞んだ視界のまま
笑っていたい
明るい光も
たまになら浴びて
二人で居たい
溜め息は要らない