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詩人:どるとる
今日も走る暴走列車
心の中にのびるレールをガタゴトと
音を立てて走る 走る
欲望は僕はどこまでも駆り立ててゆく
いつまでも終わらないあふれる欲望に
心はいつしか支配され
この世界にばらまかれた金の延べ棒にも匹敵する夢を探しに旅に出た
吹きすさぶ風を受け
時折、波に流され
猛吹雪に凍えそうになりながらもやがて訪れる優しい春の季節に舞う桜を見て笑うのさ
季節はいつでも僕らを運ぶいわば列車のようなものなのさ
今日も少しずつ僕らは今いる季節から次の季節へとこうしている間も進んでいるんだ
雨が多いな
やたら暑いな
それなら今は夏だね
でもやがて寒い冬が来て
と思いきやあたたかい春が来て
季節はめくるめく速さで変わりゆくよ
時間という風に急かされながら
季節という名の列車に乗り込んでいるよ
僕はもう降りられない
乗り込んだら最後
もう死ぬまでなんらかの季節の中
寒がったり暑がったり眠くなったりしんみりしたり
感じたり思ったりしなきゃいけないらしいんだよ
この前、桜吹雪の中
列車は走っていた
そして
この前は猛暑の中を列車は走っていた
そして今はもう寒い寒い冬の中を走っている
これからもっとこの寒さはきびしくなる
いつまでも秋だからなんて言ってられないのさ
季節という名の列車に乗ったからには
終電までつきあわなきゃあとは途中下車するように自ら死ぬしかないらしい
なんて言ってみたりして…
今日も列車は走る 走る
命という薪を燃やす代わりに時間を与えて貰いながら僕は暮らしてゆくんだ
季節という名の
時間という名の
魔法仕掛けの
列車に押し込まれたときから僕はこうなる運命だった
ほら 今日も
走りつづける列車の中で嗤いもするし泣きもする
そんなあたりまえなようで特別な日々を誰もがみんな生きてる
それぞれの事情の重さに潰されないよう命を支えながら。