詩人:山姫
空に星が増えゆくにつれて僕達の会話が少なくなってゆく
「…今日は楽しかったね」
不意に君は噛み締めるように言った
頷く僕のトーンは少し低く
ちらりと見た君の顔も少し儚げに見えて
僕は少しだけ速度を落とした
それはささやかな時間に対する抵抗
「じゃあまたね…おやすみ」
玄関先で手を振る姿に手を振り返し
助手席の空いた車を走らせる
街灯の明かりを駆け抜けながらあの笑顔を思い出していた
淋しげな笑顔
「また眠れない夜が続くかな」
静かにこぼした言葉は煙草の煙に紛れて消えた
2010/02/05 (Fri)