詩人:快感じゃがー
あたし 何だか 酔っちゃった
現実に 幻想に
酔っ払っちゃったの
煙草一本 で
買われちゃったの
それだけの価値 しか
なかったみたい
先生は あの時
先生じゃなかった
確かに 先生だった はずだけど。
そのまま 歩けと
言われて歩いた
虚しさをより上回る
快楽の端っこ
あたし もう 何だか
疲れちゃったよ
絶対的な過去 美しすぎて
模範解答に
釣られちゃったの
それだけの価値 でも
どうでも好かった
先生が あの時 先生らしく
さり気なく
すべてに暗幕を被せて
そのまま 走れと
言われて走った
怖くて 何にも言えずに 帰ったわ
『青い林檎が 好きなんだ』
先生は ただ 笑ってた
沁みる西日が印象的
悪魔によく似た
鋭く光る目の 奥にバンビ
蕩けそうな夢に
抱かれながら ね
この席は もう
あたしの居場所じゃ ない って
なんとなく 分かってたのよ
だから 悲しくて
ちょっとくだらない と思った
こんなこと
総てがね。
ねえ 先生
いつか 林檎は 熟してしまうわ
どんな林檎も 赤く実るのよ
そして もし
食べ頃を逃したなら
見向きもされずに
地面に 落ちるかも
ああ
だから 先生は
手を取ってくれたのね
一緒に階段を
上ってくれたのね
返事はないけど
やっぱり 微笑んだ後で
世界に あたしを 丸め込んでく
先生は あの時 先生でしたか
大人になった今
全然 わかんないのよ
あたしを愛する
凡てのものを
敵に回した あんたは憎い
そして 嬉しいの
あんたで善かった
安堵と ギリギリの罪悪感の 歪み
先生が教えてくれたものは
たった一つ だけ
煙草一本 火事の元