詩人:高級スプーン似
牛の死体を焼いて食べて
「美味しい!」って喜ぶ姿も
人間以外のぼくからしたら
十分狂気を感じるけれど
そういった議論は今更で
牛肉は食べても
そのことには誰も
手をつけないし口にはしない
明日あさって自分が死ぬのも忘れて
ホラー映画に恐怖する
みたいな感じ
ジェイソンよりも貞子よりも
いつか自分の命が終わることの方が恐ろしいはずなのに
悪夢から目を覚ませばほっとする
猿の時分から
女子高生の今までも
恋に茶をしばいて悩みは尽きず
愛に救われ突き落とされる
不老不死になれば
子どもは要らない
子どもが要らなければ
セックスも性欲も愛も
恋に患う必要もないのに
いつになったら人間は
次の世代に機種変するの
がん脳卒中心臓病から
頭痛に胃痛に腰痛に心を痛ませて
ラブ&ピースを謳い歌われながら
エイズに感染
未だに戦争は無くならないし
人は亡くなるし
深い悲しみ
怒り涙する人は絶えない
人は死ぬ
死ぬのが怖い
絶望の連鎖を断たない限り
死にたいと死に絶えることだけが
生きる絶望から救われると
信じて病まない人たちも救われない
人間以外のぼくからすれば
別にどうでもいいことだけど
本当は
苦しむことが大好きで
どうしようもないことに悩んで
どうしようもなくなって絶望することが
望みなのか
だから
太古の昔には備わっていた永遠を手放して
恐怖を手に入れ
日々恐怖し
恐怖に囚われ恐怖を忘れ
そう遠くない未来に死ぬのか
他人事の恐怖を
我が事のように愉しんで
己が人生の最期を逃れようと
今に踏み止まろうとするも
実に呆気なく
命を喪失う
人という名の得体の知れない生命体の恐怖
明日はトンカツだ