詩人:さみだれ
今夜は月が綺麗なので
私は旅に出ようと思う。
西へ西へと歩いたならば
日に焼ける心配もない。
私が旅に出た夜に
帰ってきてとせがむ者なし。
私は眼前に広がる夜のベールを
剥がして纏い歩き出すのみ。
血のない価値を見出だすことも
心通わせうち震えることも
この夜のうちは息を潜め
足音殺して旅に出る。
濁音のない月よ
陰りを知る月よ
私たちの身の程を痛々しくも示してくださる。
私たちは知識や情よりも先に
尊いものを見つけるべきだったのだ!
夜のベールを剥がせ
つれないコンダクターと離別し
旅に出る支度を。
月がよく見える方へ
私は旅に出ようと思う。