詩人:大示
風の中揺れる夢
思い込め
咲けよ、咲けよと唄う
遠き日に
思い馳せ
哀しさが募る
霧の中
鳥の声に
導かれる
迷ひ家
お伽噺の世界に
辿り着いたとき
開かれてく
記憶の扉
懐かしい
子守唄
夢現に聞いた
母の歌声
追い求め
駆け出した
迷ひ家の廊下
唐突に消え行く
遠ざかる
母の歌声
幻
迷ひ家
気がついて
見渡すと
私の家
夢の樹
蕾付けた夢の樹に
身体預け泣いた
耳に残る
あの子守唄
風の中 揺れる夢
想い込め
咲けよ、咲けよと唄う
遠き日に
想い馳せ
哀しさが募る
(マヨヒガの蛇足)
静かな風の中で子を揺らして
私と妻は、おもりをしている
囁くように歌いだした子守唄は
遠い母を唐突に思い出させた
ふと周りを見渡すと森の中
妖しい霧と響く鳥の鳴き声が
私を古めかしい大きな家に招いた
扉など無いその家から
子守唄が聞こえてくる
それは亡き母の声だった
迷い無く長い廊下を走り出す
子守唄は私を一つの部屋に
導いた
戸に手をかけた瞬間
景色は薄れ遠ざかる
子守唄も無情にも遠ざかる
これは幻だったのか?
行かないでくれ、マヨヒガよ
再び聞こえてくる子守唄
気がつき目を開けると
私の家があり
私の妻がいた
情けない私は妻と子を抱きしめ
泣いた
少し冷たい風の中
二人で子守唄を歌う
『この子が健やかで在るように』
遠き日の父と母を思いだし切なさが募った