詩人:どるとる
実像は常に偶像を生む
真実は常に偽造を生む
光が影を生むように
形をもつもの
実体をもつもの
全てなんらかの闇を背後に抱えてる
そんな闇から抜け出せない僕だけがまるでヌケガラのようにうつろなまなざしが空(くう)をさまよう
本物から生まれたまがい物が少しずつ本物を追い越そうと画策している予感
そんな根も葉もない確証を僕はただ抱きしめてる
ヌケガラの僕のままで
長い夏の日々を彩った
今は亡きセミのように
遠いメロディ
きれいなアンサンブル
冬というに似つかわしい寒さの中
僕は思い出していた
ちょっとずつ
ちょっとずつ
思い出にかかった
靄がはれていく
そこに見えたは
小さな 喜び
そして
なぜか その喜びに
かぶさるように存在する あたたかい悲しみ、そして伝う涙
ヌケガラのままの僕は
寒い寒い毎日を歩くのに手一杯で
笑ったり 喜んだりする暇などなく
ただ寝て起きて寝て起きて
今日も日は暮れる
ヌケガラの僕のままで
ヌケガラのままの僕で
もう二度と生まれ変われない
僕のままでこのまま新しい夏へ 新しい冬へ 何度でも繰り返すよ
そこに希望がある限り
ヌケガラでも生きてくよ
僕には光見えるのさ
そんな嘘を偶像代わりに打ち立てて
筋道の代わりに打ち立てて
ヌケガラである自分を巧妙にひた隠す。