詩人:浮浪霊
彼女の子宮は、悪気アッキの本源に繋がってしまった。
次々と化け物を産み落とすようになったのもその所為だ。このままでは世界が滅んでしまう。彼女の封殺が決議された……
そういう説明を、僕達は受けた。
いっそ殺してやってくれと泣いて懇願する僕に、教奴様は暗く首を横に振る。器が割れると零れてしまうのだと
泣き叫ぶ彼女の肢体の孔という孔が縫い合わされ、さらに一枚の分厚い聖別処理された鉄板に体を縫付けられる。オブジェみたいになってしまった彼女は神殿に安置され、巫女に抜擢された僕と一緒に衛星軌道上に打ち上げられた。
これで万が一の事態になっても、(運が好ければ)僕と彼女とあと世界の十分の一が呑まれる位で済むだろう。
口も鼻も使えない彼女の為に、栄養や酸素のたっぷり詰まった注射を彼女の血管や気管に突き刺すのが神の伴侶としての僕の務めだ。平和を願って祈ったり、彼女に触れたり語りかけたりして許しを請う事も。
だけど、窓から見下ろすと見える平和に廻る青い地球が、酷い憎しみを僕の心に根付かせ、僕は彼女を犠牲に営まれるあらゆる幸福を妬み呪うようになった。
僕は妄想する。
いつか誰かが彼女のために世界を滅ぼしてくれるだろうと
勇者が現れこの神殿を攻め落とし、彼女を救い出してくれるだろうと
その救世主が僕で無いのは、とても残念なことだったけれど。