詩人:さみだれ
歌うもののいなくなった
私の詩の海
浜辺に立つ恋人
黄昏と舞うもふらつく
ああ…
静かな時間
我が身の存在すら危ういほど
アルペジオ
彼は上手だった
観客は惜しみない拍手
震えたよ
けれど彼の指は
二度と動かない
彼を憎んだ誰かが
アルペジオを奪った
そうして
歌うもののいなくなった
私の詩の海
人魚は呼吸の仕方を忘れ
みな息絶えた
残されたものは
奥深くへ
みな喪服を着た
社会は
あらゆるものが複雑に
わからないことばかりで
生きていくのに十分なものを
思い出せなくて
そうして
歌うもののいなくなった
私の詩の海
血が潮と混ざり
プランクトンに食べられ
やがて
浜辺に着く頃
欠けたその血を
読んでほしい
歌うもののいなくなった
私の詩の海で