詩人:どるとる
古い昔の話をしよう
埃かぶった話をしよう
僕はいろんな人を座らせた椅子です
時にはおじいさんを 時にはきれいな女の人
時には小さな子供
時間が 流れてゆくけど僕はちっとも
変わらなくて だって壊れても必ず誰かがなおしてくれるから
僕には名前がない
僕には親がいない
子もいないけど
好きな人や愛する人がたくさんいる
代わる代わる たくさんの人が 腰をおろしてはまた どこか遠くに旅立ってしまうよ
僕は知ってるよ人は命を持っているから
いつまでも一緒にいられないこと
だから君は あの時
さよならと言ったんだよね
だけどそのとき あなたは優しく笑っていた
なんとなくだけど
僕にはわかるんだ
海が見える窓から
波とお話していた
僕にはいろんな人との思い出がある
話すことは出来ないけど座る人が話してくれる話を聞くのが好きだった
時間は待ってはくれない
寂しくないはずもなく 泣きたいけど涙も出なくて 何度もしてきたさよならなのに
慣れないよこればかりは
なんでだろう もう座る元気もないのに
あなたは ずっと僕に話しかけてくれた
そんな僕ももう歳をとって 捨てられてしまう でもいいんだ
今までたくさんの人を座らせてきたから
今度生まれ変わるときが来ても また椅子に生まれ変わりたい
そしてたくさんの人の涙や笑顔にふれて
僕はただそれを眺めて 悲しいときうれしいときそばにいられたらいいな
椅子はただ誰かが
座るためにあるから
代わる代わる たくさんの人が 腰をおろしてはまた どこか遠くに旅立ってしまうよ
僕は知ってるよ人は命を持っているから
いつまでも一緒にいられないこと
だから君は あの時
さよならと言ったんだよね
だけどそのとき あなたは優しく笑っていた
なんとなくだけど
僕にはわかるんだ。