詩人:善田 真琴
時折、ばさりと馘首の如き音を鳴らして、日陰に残りたる雪くれならむ、三角屋根を滑りつつ地に落ちて部屋居の人を驚かすなり。温暖化とは僻事にて、実には二百年毎の小氷河期に入りたるにや、今年は八洲津々浦々に甚く降り積もりたるとかや。
雪と言へば、西比利亜の永久凍土に眠り居りし古代の種、三万年の星霜を隔てて白き撫子の花咲かせにけりと仄聞致したれど、二万年余り前の氷河期に万毛芻を追ひて陸伝ひにこの地に渡り来たれる我が祖先より更に古き種と思へば、床しき心地いと抑え難くとなむ詠める。
凍て土に
永く眠りし
種ならば
いざ言問はむ
古き事ども