詩人:冥
口、耳、目、どれかがなくなってしまうのなら、どれを選ぶ?
僕がふと聞いたその質問に、君はうーんと考えたあと、困ったように口を動かした
「口は、困るな、君と話せなくなってしまう」
「耳も、困るな、君の声が聞けなくなってしまう」
「目も、困るな、君を見れなくなってしまう」
それじゃ答えになってないよ、と言うと、君は言う
「じゃあ、全部なくなってもいいよ」
どうして、そう言った私の手をぎゅっと握って、君は笑った
「君と話せなくても、声が聞こえなくても、姿が見れなくても、こうすれば君の感情が心に浮かぶもの」
さっきと言ってることが違うよ、なんて言葉は、夕焼けに照らされた君の笑顔に呑み込まれて、
僕はただ、ぎゅっと手を握り返した