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[88671] 世界が大きかった頃

詩人:はるか


港に入る船を見ていた
どこかの国の知らない
文字
間近で見る船体の
潮にまみれてはがれた
ペンキ


私は華奢なタラップを
上る
足元を見ないように
握る手に力をこめる


壁をくり抜いたような
仕切りに扉はなく
小さく分かれた船内は
夢の隠れ家みたいで
まだ小さかった私の心をとりこにした


通りすぎる大人達は
見上げると首が痛くなるほど大きくて
手渡されたお菓子を見ても、何だか怖くて
少しだけ泣きたくなった


これからまた長い帰路に着くのだろう


四方を海に囲まれた
青い平原を突き進むように



世界はまだ何もかもが
大きくて

知らない事が
あるという事を
ようやく知った私は


ポケットにしまいこんだお菓子を潰れるほど握りしめた

2006/11/02 (Thu)
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