詩人:はるか
港に入る船を見ていた
どこかの国の知らない
文字
間近で見る船体の
潮にまみれてはがれた
ペンキ
私は華奢なタラップを
上る
足元を見ないように
握る手に力をこめる
壁をくり抜いたような
仕切りに扉はなく
小さく分かれた船内は
夢の隠れ家みたいで
まだ小さかった私の心をとりこにした
通りすぎる大人達は
見上げると首が痛くなるほど大きくて
手渡されたお菓子を見ても、何だか怖くて
少しだけ泣きたくなった
これからまた長い帰路に着くのだろう
四方を海に囲まれた
青い平原を突き進むように
世界はまだ何もかもが
大きくて
知らない事が
あるという事を
ようやく知った私は
ポケットにしまいこんだお菓子を潰れるほど握りしめた