詩人:リコ
解いた握り拳
触れたガードレール
冷たく濡れた掌
イゥンイゥンと鳴く
鉄の生物
ブラック
アイボリー
グレイ
見送り見送られ
向こう側が
傍まで来ていた
ような気がした
あの子を包んだ
向こう側へ
言葉が流れる
感情が流れる
涙が流れる
先走った
リフレインのように
誰とも繋がらずに
ただただ流れていく
何年も
婉曲だった視界
あの子以外
歪んで見えた
今更
顕微鏡で見るカビは
美しいって事を知った
常時酸っぱかった口内
今は
様々な味を知った
日常から染み入れた
変化は全身に及ぶ
行列は後進する
そして
私は私を残して
後退していく
穏便に
じっとりと
濡れた掌
しわにそって
溝を作る水分
握りしめて
握りしめた
ボールペンで
《三百円》
と書かれた
手の甲
なんだっけこれ
走り書きの日常に
笑えてきて
泣けてきた
年を取らないあの子のいる
向こう側に
見せつけた
三百円マークの握り拳
そこから見える
私のこれは
震えているのか
教えて欲しい