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詩人:高級スプーン
一人歩きのお話が
辿り着く先に
待つものは
読み進む先に
掴むものは
得られるものは
本当にあるの
不安になるのは
怖くなるのは
灯りも持たずに
暗夜を独りで歩くから
そんな単純なお話で
いつだって
後向きな作りをしてて
抽象的に語っちゃって
語尾を曖昧にして括る
しまいには自分でも
理解不能な意味不明
伏線をバラまき過ぎて
収拾がつかなくなって
書き棄ててるのは
あぁ
俺か
どんな話がいいだろう
次を考え始めると
それより昔は忘れてく
その繰り返し
その繰り返し
それでいいんだ
それでいいのか
結末を知る前に
絵本を閉じるなんて
ちょっと待てよ
「僕」のお話は
まだ
終わっちゃいないだろ
自ら狭めた
道も見ないで
自ら造った
殻に籠もって
空も地面も
自分ですらも
本当は
見えていなかった
でも
無理矢理に
断ち切ろうとしたお話は
ぎこちないけど
首の皮一つ
この場所に
繋がっていたみたい
軒下で少し雨宿り
足元を確かめてみる
それから絵本を
カバンにしまうと
同時に
頭の上から声がして
気のせいかな
顔を上げると
「僕」と目が合って
はるか昔に雨上がり
落としたお話
拾って進める
気付けば「僕」は
前を向いて歩いてる
地面が変われば
自分も変わる
そんな美味しい
ハナシはないか
目を逸らして
うつむいて
相変わらず俺は
下を向いて歩いてる
ラストを飾る一行は
もう少し先でいいや