詩人:千波 一也
せっかくのスカートが、なんて
君は
ふくれた顔で
片手にサンダル
フナムシもフジツボも知らない
君は
おびえた顔で
片手にサンダル
ここは
たまたまの国道沿い
誘われるままに
車を停めた
穏やかな磯
そろそろ機嫌を直してさ
岩に腰かけてごらんよ
大丈夫
磯辺に棲むものは
みな 優しい
ちゃぷんと
水音を立てれば
みな こそこそと逃げだしてゆく
大丈夫
君を迎えるものは
ひんやりくすぐる潮と風だけ
ヒトデも
カニも
イソギンチャクも
みな こうして生きているのさ
磯辺に棲むものは
みな 優しい
あ、
向こうで 貝が動いたね
ヤドカリかも知れない
捕まえてきてあげようか
うなずく君の瞳には
すずやかな
凪
だから
僕は
ちゃぷちゃぷ
ちゃぷ
ちゃぷ
鼻歌まじり
そうして
ヤドカリ
は
こそ
こそ
と