詩人:巳年生まれ
ドアをあけて
カギをかけて
一歩踏み出していったきみ
ドアをしめて
カギをぬいて
一歩踏み出していったきり
今や見る影もないのさ
せっかく きれいな夕陽なのに
伸びる影すら見つからないのだ
恐らく彼女は 遠い世界の
それこそロンドンにでも 行ったのだろう
恐らく赤色の かっこいい車の
キャデラックでも 乗り付けてったのだろう
たまには手紙も欲しいね……
私生活が 苦しくなりつつあるのは
財布がないせいじゃないのだろう
私生活が 苦しくなりつつあるのは
野菜を食べないせいじゃないのだろう
私生活が 苦しくなりつつあるのは
文字を書かないせいじゃないのだろう
私生活が 苦しくなりつつあるのは
彼女のせいじゃないのだろう
私生活が 苦しくなりつつあるのは
誰かが楽をしてるからなのだ
誰かが
名も知らぬ誰かが
ちゃんと夜に帰ってるからだろう
ちゃんとご飯を食べるからだろう
健康体だから なのだろう