詩人:さみだれ
機械が
私の脳を
汚しました
あるひとつの感情
あるひとつの記憶
あるひとつの知性
電波で送られてきたそれらは
1と0になり
私に注がれます
私と異なる媒体は
バージョンアップし
私は
廃品と呼ぶにふさわしい代物です
まっとうな人間は
自己主張を繰り返し
進化していると錯覚します
しかし低スペックの私は
他者を依代に
進化しなければなりません
私の脳を
電気虫が這っています
おそらくそれは
自己主張を餌に
生きているに違いありません
何しろ私は
廃品と呼ぶにふさわしい代物ですので
そういった欠点があっても
不思議はないのです
まっとうな人間は
矛盾こそが人間らしさだと言わんばかりに
その時の電流値によって
言うことが違います
晴天の日に
愛した人を
雨の降る夜に
愛さなくなるのですから
機械が
脳を支配する私は
一途に思い続けなければ
熱暴走を引き起こす恐れがあるので
そういった矛盾は
生まれません
なので私はまっとうな人間とは
程遠い
寂れた媒体なのです