詩人:どるとる
風の向こうに 続いてゆく坂道は
誰かの思い出を抱いたまま
笑ってた 泣いてた そんなこと 全部
忘れていた なかったことにしていた
きれいすぎる記憶は 色あせてしまえば
枯れた花のよう 光を失った眼差しのよう
それは 夏の間だけ聞こえる 蝉しぐれ
歩き出した時から 終わりをはらんでる
サヨナラをするためにめくられたページ
遅かれ早かれ 死を分かつ選ばれた花
開いた瞼の 向こう 映る景色は
何かが 足りない 不完全だよ
なくした宝物が見つからない
自分で隠したから誰も知らない
どこに埋めてしまったんだろう
あんなふうに素直に笑える自分を
それは 夜空に咲いた花火のかたち
生まれては消えていく命
数あるの中のたったひとつの命
誰が決めた訳でもなく 時の中に咲いた選ばれた花
なんとなく どことなく 切ないのは
遠ざかってゆく季節の後ろ姿を
その影を かすかに感じてるから
それは 夏の間だけ聞こえる 蝉しぐれ
歩き出した時から 終わりをはらんでる
サヨナラをするためにめくられたページ
遅かれ早かれ 死を分かつ選ばれた花。