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詩人:どるとる
規則正しく 礼儀正しく 生きてみてもそれはなんか自分じゃない気がする
やっぱり自分っていうのは どこか他人から嫌われてさ わがままな自分なんだと思う
帰りの電車の中 窓の外に目をやれば今にも落ちてきそうな大きな月が見えた
いつでもあの月に憧れてばかり
夢という夢は持たないことにしているんだ
どうせ願ったって叶いっこないからね
焦りと不安を隠せないまま何度でも何度でも変わらなく日々は続くというのに
何も変わらないまま
僕はずっと僕のままで生きている
それはいけないことだろうか
いつまでもなま温かい何かにすがってさ
甘えてばかり
まだまだおしゃぶりがはなせないでちゅか
僕の中のもうひとりの自分が皮肉るように言った
もう 何もかも捨てて
人間社会から逃げて
そんなことしたって悲しいだけなのに
そうだ 昔習ったろう
困ったときは
自分以外の全てを野菜に変えろって
だから 僕を責めるおまえも 僕を見下す貴様もみんなみんな野菜だ、特に僕の嫌いなたまねぎだ
お笑いだね こりゃ傑作中の傑作だ
なんて ひねくれているんだろう 僕は
でも そうするしかないのです
だから 少しくらい許してほしいのさ
自分以外の全ては
たまねぎなのだ
だから 何もこわくないのだ
ほらたまねぎがなんか言っているよ
見方を変えれば世の中なんて八百屋も同じ
ほらみんな野菜なんだ
だからこわくないんだ
いい方法 教えてくれてありがとう お母さん
こんなとこで役に立つとはねなんとも驚きだ
誰かが僕に望む
規則正しくとか
礼儀正しくとか
できそうにないが
せめて 人間らしく
悪いことは悪い
良いことは良い
そんな概念は持ち続けているから
はみ出し者でもさ
見捨てないでほしい
野菜の被り物をそっと脱いで微笑んだ君にだけはこんな素直な気持ち伝えられるから 僕は幸せ
君だけが僕を認めた。