詩人:どるとる
流されていく 絶え間ない時の流れに
乗り込んだこの電車の中から
眺める景色は 昨日も今日も変わらない
知らないままの誰かの涙や笑顔も
風の音に たやすくかき消され
目を閉じたまま いくつかのイメージを
暗闇の中に描いて その輪郭をなぞる
降るように時は 僕のからだをすり抜けて
やがて 僕は空っぽになる
がらんどうを埋めるのは七色の思い出
いつか たどり着くべき場所
風に乗って 何処へ行くのかあの綿毛
旅をするのなら 悲しみも連れて
花の種と 刹那の 夢を道連れにして
ストロボを焚いて その一瞬を切り取れ
夢の尻尾を もう二度と離すな
さよならの声が 行く手を遮るなら
道を外れて 地図にない道をたどる
忘れていくのさ 笑ったことも泣いたことも
本当に大切な記憶だけがあればいい
いつか終わる 物語を抱いて
あらすじを 追う 僕の足取り
通り過ぎる 風や
いつか 見た景色
いつか 聞いた声
そのすべて残らず僕のかけら
余すことなくあつめて ひとつに重ねたら
何が見えるかなあ
降るように時は 僕のからだをすり抜けて
やがて 僕は空っぽになる
がらんどうを埋めるのは七色の思い出
いつか たどり着くべき場所
迷いなく咲くべき場所。