詩人:どるとる
夏の上昇気流に 乗っかってやって来る
あのむせかえるような長い長い坂道を
汗かきながら上る 君の背中が見える
ひまわりの咲く道をペダルを漕ぎながら行く
悲しみは もうしばらく 待たせたままで
僕はずっとさっきから風見鶏を眺めて
風が吹くのを待っている
夏は 呼ばなくてもそのうちやって来る
青い波に さらわれて
あの陽射しの足元へ
五月雨も ゾウの如雨露も 下手くそな絵日記の続きも
朝顔の観察も 後回しにした宿題も
今は思い出の中に光るしずく
夢のあとさきに 消えた 片っぽだけのサンダル
いつか抱いた淡い恋心と
線香花火の余韻
それはすべて 遠く揺れるカゲロウが魅せる蜃気楼。