詩人:千波 一也
改札口にて
お待ち申し上げております
行き先を
詮索したりはいたしません
どうぞ
ご安心を
あなたがここを
通過してゆく事実のみ
確かめさせて頂きたいのです
お顔を
覗き込んだりいたしません
わかりますとも
靴音と
きれいな指と
揺れる髪
それだけで
わかりますとも
お顔は拝見いたしません
この町が晴れ渡る日にはいつも
わたしは此処におります
行き先は
存じ上げておりません
行き先の天候もまた
存じ上げておりません
わたしはただの通過点でございます
あなたも
よくよく知っておいでのように
改札口にて
お待ち申し上げております
この町が晴れ渡る日にはいつも