詩人:どるとる
大した ことはないさ
少しだけ つまずいただけだ
僕なんかよりずっと 苦しんでる人なら
世界を見渡してみりゃいくらだっているはずだ
なのにどうしてだろう僕は僕の世界しか見えない
通り過ぎた雨の 足跡がまだ
この胸の中に 刻みつけられているから
いつもの夜が いつものように
ただ過ぎ去ってゆくだけの ことなのに
どうしてなんだろう
今日はやけに 涙もろい
街の明かりが 僕に ささやくんです
もう 無理するのは やめないかって
優しげに 笑いかけるから まだ色もないこの気持ちは 容易く蒼く染まってしまう
放っておいてくれよ
そのうち この雨は降り止むだろうから
人生に立ち止まるとき 決まって僕らは
多くの場合 死を選ぼうとするけれど
なのにどうしてだろう命が尊くてとてもじゃないが手放せない
終電の窓の外に映る景色
どこまでも広がる闇と小さな家の明かり
こんな僕のことなんて放っておけばいいのに
おせっかいな人はどこにもいるもので
どっかの誰かさんのせいで 孤独になれやしない
どうしてって聞いたら
当たり前に言うんです
「あなたが好きだから」
それを 聞いた僕はいつも 返事に困ってしまうんです
まるでつまらないバラードのようで
恥ずかしいやら たまらないやら
胸の中が 切なくって 熱くって
君が いつもより まぶしく 見えたりしてしまう
いつもの夜が いつものように
ただ過ぎ去ってゆくだけの ことなのに
どうしてなんだろう
今日はやけに 涙もろい
街の明かりが 僕に ささやくんです
もう 無理するのは やめないかって
優しげに 笑いかけるから まだ色もないこの気持ちは 容易く蒼く染まってしまう
染まったそばから君は いとも容易くその寂しさを紛らわせてしまう
だから僕は当分簡単には死ねない。