詩人:剛田奇作
私の記憶はどれも散漫
どこにいけばいいのか分からない物達で溢れている
足の踏み場もないこの部屋と同じ
まるで詩を書くためだけに用意されているような多くの断片
あんなことあったね、と いうと
そんなことなんてあったかしらと彼らはいう
私が正しいと思っていた
最近そうではなかったと分かり始めた
たとえば 小さい頃
ひっくり返してしばらく待つとピョーンと飛び上がる小さなゴムのオモチャ
カラフルなそれが、いっぱい積み上がって子供用の棚に乗ってるようすが焼き付いているけど
私は そんなにたくさん持っていなかったはずなのだ
いつか見た夢を現実と思って、信じた
だから
煙り掛かっていると思ってた冬の餅屋も
アパートからみた砂のピラミッドも
たぶん本物じゃなかった