詩人:どるとる
冬の雪に埋もれながら春の桜の夢を見る
真っ白い景色の中にかすかに桃色がかった花びらの影がうっすら見える
そんな春の芽吹きに気づきもしないまま
季節の列車は今も走る 時間というレールの上を走りつづける
春よ来いと言ったはずなのに冬の寒さになんだか恋心を抱いてしまったんだよ
それでもさよなら
手を振る季節
お別れの時間
恋人に手を振るように
もう会えないみたいなさびしさが僕を蒼く染める
心と心を今 紡ぎ出して
大切な声と言葉を思い出して
言えていたはずの素敵なあの合い言葉
ああ 言ってみよう
冬はもうじき終わる
春が来るまで
この寒さが去るまで
冬の真ん中あたりかな今
立ち尽くしてる
ちょっとずつ進んでる
絵を描くように
日々何か変わる
そして何か削り
また違う絵になる
春よ来い
今 すべての願いや望みや欲望を集めて詩う
春よ来い
僕にはそれがただの言葉のようには感じないのだ いわばそれは魔法を呼び起こす呪文
どんなに寒くてもそう思うことで僕はあたたかい光の中にいるように そんな心地になれる
だから言ってみよう
心にマフラー巻こう
雪に埋もれながらも
しんからふるえながらも 春よ来い…
おいで… さあ ここへ
僕は寒い中 待ってるよ
急げとはいわない
君のペースであたりまえに景色を塗り替えてくれ
桃色のその艶やかな羽織りで身を包んで。