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[33076] ぼくの全てが分かる

詩人:けむり

始めて心を許した友達が
「コーヒーを煎れるよ」
とほがらかに笑った
ぼくはひざをさすりながら
「砂糖もミルクも入れないで」
とぎこちなく笑って返した
友達は分かっているよといった表情で
やわらかくうなずき
ぼくは背筋をただしながら
窓に映るまぶしい青空に目を細めた
腕にはめたアナログ時計が静かに秒針を刻み
床に散らかったゲーム機は
まだコントローラーに繋がったぼくたちを
覚えているみたいだった
友達は『楽園の征服』を鼻歌で歌い
ぼくは人さし指でリズムを取りながら…
若葉の萌える春の匂いが ぼくたちを包み
うららかな昼下がりに
ぼくたちは同じものを思い描いていた
それはきびしい密約だから
ぼくたちでさえ口に出来ない
けれども同じ瞬間に目を合わせ
照れくさくも確かさを認め合い
酸味の強いモカコーヒーの香りに
とろけて 心と心は二人っきりで
はかなくも果てしなく広大な糸を 見ていた

2005/05/01 (Sun)
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