詩人:カナリア
「しっかりしぃや〜」
貴女の口癖
枯れかけたトマトの苗にも口とんがらすアホな弟にも
貴女に迷惑ばかりかけた私にも
貴女は言いましたね
「しっかりしぃや〜」
蝉の大合唱が
泣いていますよ お母さん
貴女の棺を運ぶとき
カサカサと蝉の脱け殻が
ぎょうさん落ちましたわ
まるで貴女の脱け殻を
辱めているかのように
黒の着物は母の薫り
譲り受けた私を父が見つめる
えぇそんなに初恋の人に似てはりますか?
初夏の風が貴女を連れ去る「しっかりしぃや〜」
私は背筋を伸ばし
“凛”と貴女を見送った
2005/11/14 (Mon)