詩人:千波 一也
しずくのことは
一輪、
二輪、と数えあげたく
青空ならば頷いてくれるだろうか と
躍らせた髪
真昼の月の通い路と
銀色乗せた浅瀬の流れは
中空で いま
十字を結ぶ
かたちを選ばなければ
不可視とは無縁なはざまで
祈りは
こんなに美しい
氷と雪との深い眠りを
妨げぬ色で鳥たちは啼き
氷と雪との深い眠りに
障らぬ色で獣は駈けてゆく
鮮やかな言の葉に
慎ましい光を添えながら
滅びを見据えて
あまたに 芽のほころぶ季節
ひらく、
ゆれる、
かおる、
謳歌の舞台の
そのはじまりは
いずれの花の彩りか
七色含んで割れそうなしずくは
いずれの花に
零れるか