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[33345] 渡り鳥と家畜

詩人:けむり

花々が色彩を競い合っている
香りに満ちた庭園に
一羽の渡り鳥が迷い込み
劇的な不幸だが
物思いにふける家畜に出会う
空は無限の螺旋のようにどこまでも青く
渡り鳥に恐れることなどなにもなかったが
家畜の 安穏だがもの憂げな眼差しに興味を持ち
羽を休めることにした
渡り鳥と家畜
それはあまりにも生き方が違う
それゆえに話は弾み
そして幸せについて二人は考える
一方には不自由だが日々こと足りる生活があり
一方には自由だが危険をともなう生活がある
それは相反するものだけれど
どちらにも満足と不満足がある
お互いはお互いをもっと知りたくなり
恋に堕ちた

二人は
むさぼるように
足りないものをおぎなおうと
求め合う

渡り鳥は家畜が繋がれた庭園にはない花を贈った
家畜は庭園の中でよく毛虫がつく樹を教えた
お互いは二人でいれば幸福だと感じ
かけがえのないものを見つけた気がする

けれどもやがて季節は移り
季節に殉じて庭園から色ははがれ
風にはうれいがこもり
渡り鳥には飛び立つときが訪れる

二人は来年の初夏に再会することを約束する
けれど家畜は守れないことを秘密にしている
やがて渡り鳥は北風に乗って南へ飛び立ち
家畜は一人 物思う
幸せの頂点で終わる生涯と
思い出を熟成させる生涯と
どちらがより哀しいだろう
どちらがより罪深いだろう

二人の思い出を木枯らしがからかい
二人の思い出を雪がおおう
静かに時は流れ
やがて春は訪れ
雪解けとともに草木はいっせいに芽吹き
庭園には今年も色とりどりの花が咲く
あの樹には今年も毛虫がよくつき
その下で去年はなかった花が咲く
風はゆるやかに 南から吹いている

2005/05/09 (Mon)
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