詩人:弘哉
俺の名前っていつから『嘘つき』になったの
本名なんて忘れました
隣から聞こえる騒音のせいで
自室にいたくありません
あの人が発する騒音がうるさくて
眠ることさえできません
『嘘つき』が胸を締め付けたんだ
気付かない内にその名前にも
返事をするようになっていました
あの人の発する騒音も
聞き流せるようになりました
俺の名前ってなんだっけ
風呂場には届かないから
あの騒音も届かないから
きっかり一時間半
湯ざめでぐしゅぐしゅ言ってる耳に
届いたのはいつも以上の騒音
「嘘つき、いつまで入ってるの!!」
安息の地ってどこだろう
名前はたぶん必要のないものなんだね
俺もあの人の名前なんて思い出したくない
俺もあの人の名称なんて覚えていたくない
あの人が一般に
「母」だなんて呼ばれてるってこと
忘れてしまいたいんだ